ニュースはつくるもの

月に一度、コンサルテーションを提供しているお客様を訪ねたときのこと。開口一番、「いや~。ニュースがないからリリースは無理ですねー。」とおっしゃいました。創業期のベンチャー企業のお客様です。新サービスを発表した後のニュースが続かないというのです。年間計画で予定していたリリースの発表も消極的になっていらっしゃいました。詳しくお話しをうかがってみると、私の視点からみたら、これもニュースになる!これもおもしろそう!と、次々プレスリリースのアイディアがわいてきます。広報活動を始めたばかりの会社では、こんなことが起こります。自社の商品やサービスの特長や社会的な価値を客観的に理解していないのです。「客観的に」というのがポイントです。そして、「ニュースはつくるもの」という視点を持つことが大事です。これは、次々新商品や技術開発を発表できるような大企業に限ったことではありません。社会へのアンテナをはっておくと、ニュースとしての価値を見つける機会を得ることができます。同じ業界に限らず、広い視野を持っておくことが大切です。他の会社のサービスや商品に興味を持つときの自分の動機、軽い感覚で「これおもしろそう」と思えるもの、人、サービス、にニュースのヒントが隠れています。ずっと同じサービスであっても、季節や、そのときの話題となっていることにあわせて、ニュースを受け取る人が、受け取りやすいように発信することもできるのです。ニュースはつくるもの。そう覚えておきましょう。

キャッチよりも中身

世の中にはたくさんのノウハウ本が出ています。あらゆる分野で成功するためのハウツーが明かされています。広報の世界も例外ではありません。キャッチーな見出しでメディアをひきつける、話題性をつくる、取材を受けるためには、など。あの手この手で工夫している様子がうかがえます。

 

たしかに話題性は大切ですし、見出しも重要、工夫がいりますが、ノウハウはずっと通用するものではありません。ノウハウ本として出ているときにはもう遅いのです。世の中は日々変わっているのに、同じ話題やキャッチがそのまま活きることはないのです。広報の基本的な知識やモラルを身につけて活動することは必要ですが、ハウツー本をそのまま真似しては逆効果です。

 

例えば、インパクトのある見出しの例として「世界初」「日本一」「業界初」などがあります。これらは、よほどの偉業や実績、内容が伴っていないと信頼を失いかねません。明らかに、世界で、日本で、業界で初めてのものだけ、一番のものだけに使うからこそ圧倒的な強さを打ち出せるのです。

 

実は、目をひくことよりも、内容があること、コンセプトがしっかりしていること、それを実践していることが何よりも大切です。中身の伴った広報は、わざわざキャッチーにしなくても伝わるものです。業界で信頼のある会社や人は、強力な見出しを使わなくてもメディアの目にとまります。また、実践していること、新しい取り組みを誠実に言葉にするだけで、業界ではすごいことなんだとわかるものです。ビジネスのコンセプトや価値に自信を持つことが大切です。

 

信頼される中身を築きましょう。ノウハウ本に頼らない広報、時流にあった発信は、柔軟性とセンスがカギです。日々磨いていきましょう。

小学生審査

あなたの会社は、メディアやお客様に資料を求められたときに、すぐにお渡しできるものを用意していますか?会社やサービスの基本情報、キーとなるメッセージをわかりやすくまとめておくこと、繰り返し発信していくことは広報の基本です。媒体によってアプローチの仕方が変わっても、ベースにある情報は同じである必要があります。なぜそれをやるのか、なぜそれを売るのか、誰のために、と問いかけながら、伝えたい人に理解しえもらえるようブラッシュアップしていきましょう。

 

情報をまとめるときにお薦めの方法があります。第三者に見てもらうことです。できるだけ関係者から遠い人。一番のお薦めは小学生です。小学生に話してみて、「それどういう意味?」の質問攻めにあううちに、意外な盲点がクリアになっていくでしょう。これには意味があります。専門用語やカタカナばかり並んで意味がさっぱりわからないパンフレットを見たことはありませんか?プレス資料も一緒です。たとえBtoBの企業でも一般の人にわかりやすくまとめておくことが大切です。以前、雑誌「広報会議」で「BtoBtoC」という特集がありました。これまでのBtoB企業は、BtoBだけを意識した広報活動を行っていくのが主流でしたが、今は、その先のC、つまり消費者も視野に入れて広報活動するのが新しい潮流として成功しているのだそうです。どんなビジネスも最終的には消費者に届きますね。あなたの会社の商品やサービスが直接消費者向けでないとしても、その先には消費者がいます。プレス資料も、直接読む記者や編集者だけでなく、その先の読者や消費者を意識して準備するとよいでしょう。

プレスキットってなに?

広報の資料は、プレスリリースだけではありません。プレス向けに準備した資料を「プレス資料」とか「プレスキット」といいます。”プレス向け”というだけでなんだか特別な資料のように感じるかもしれませんが、そんなことはありません。本来、社員として知っておいたほうがよい内容、お客様が普通に知りたい情報と変わりはありません。取材の際の参考資料として、会社や商品、サービスの概要をまとめたものです。キャッチーな見出しは必要なく、内容の正確さ、シンプルでわかりやすい、見やすいことがポイントです。例えばメディアから急に取材や問い合わせが入ってきたとしましょう。すぐに答える準備はできていますか?次の質問でチェックしてみましょう。

  1. あなたの会社の基本情報や概要を正確に伝えられますか?
  2. あなたの会社の歴史や設立背景について伝えられますか?
  3. 商品やサービスについて専門用語を使わずに初めて聞く相手にもわかりやすく説明できますか?
  4. 商品やサービスの基本情報は資料としてまとまっていますか?
  5. 業かい関係者からの問い合わせにも対応できますか?
  6. 誰が取材を受けるか社内で決まっていますか?
  7. 商品やサービスの写真、プロフィール写真などのデータはすぐ提出できますか?
  8. 取材を受ける人、または代表者の経歴(プロフィール)はまとめてありますか?

この質問に全部○がつく用意があれば、プレスキットとしてOKです。口頭ですぐ応えられることはもちろんですが、文章やデータで準備しておきましょう。ふだんから準備しておくと急な取材でも慌てずに対応できます。

 

あおるな!危険

私が不定期で開催している「初めてのプレスリリース」という講座では、プレスリリースの書き方を初心者にもわかりやすくお伝えしています。参加者は、企業の広報担当者、会社を経営されている方、コンサルタント、セミナー講師など様々です。その中で、イベントの告知やセールスレターを書いたことのある方がよくいらっしゃいます。

 

プレスリリースの書き方を学んでみなさんが驚かれるのは、とてもシンプルだということ。セールスレターだと、商品やサービスのメリットや魅力をできるだけ多くあげて、読み手の気持ちをあおるように、買いたくなるように、ときには不安もあおるように書くのがいいと考えられているようです。画面でいったらスクロールした最後に、ポチッと押してもらうことをねらって書く。そういったことをみなさん実践されているようです。

 

プレスリリースは、すべてにおいて逆です。一番大事なことは最初に伝える。商品の特徴も強調したいポイントにしぼってできる限りわかりやすくシンプルに。読み手をあおらず客観的に伝える。長々と書かない。商品ストーリーもわかりやすく短く。

 

読み手はお客様でなく、編集者や記者です。あおる文章は逆効果です。事実であること、誠実であること、シンプルであることがとても大切です。

理念を伝えよう

「リリースを書くとき、一番何が大切ですか?」と聞かれると私は、「理念」と応えています。どんなリリースもベースに「理念」があること。

 

ブランド力のある企業、歴史のある企業は、その理念を大切に守ってきたからこそ今の地位が築かれています。これからの企業は、理念を知ってもらう必要があります。その会社がどういう理念を持ち、どういうコンセプトで商品やサービスを提供しているかがわからないとニュースの素材として扱ってもらうことはできません。

 

新しい会社でも、理念がしっかりしていて時流にあっていれば、プレスリリースの受け手(メディア)は応援したくなるものです。実際に会って伝えることができればベストですが、最初はなかなか時間をつくってもらえないこともあるでしょう。伝わるリリースを発信することで信頼関係を築いていけるといいですね。

 

商品もサービスもあなたの会社の理念を表現するために生まれたもの。何よりも重要ですよね。理念を発信して応援される会社になりましょう。

プレスリリース

「プレスリリース」は、広報活動の基本の1つ。広報担当者にとっては日常的な資料ですが、実際に書いてみないとわからない、そして発信してみないとわからないものです。

 

プレスリリースを一言で説明するとしたら、「ニュースの素材」といえます。新聞、雑誌、TVの報道の材料となるもの、取材のきっかけをつくるものです。広報の実用書には必ず紹介されていますね。

 

フォーマットは様々です。1枚で書いた方がいい、写真があるといい、商品やサービスの内容がわかりやすく伝わるように、話題性のある見出しが必要など。書き方についての意見は様々ですが、絶対にこれ!というのはありません。

 

大企業では、ロゴの位置や定型文などこれまでの実績を基にスタイルができています。自分の会社の特長にあわせてフォーマットやスタイルをつくっていけばよいと思います。リリースを受け取る側のことを考え、モラルを心にとめ、発信していきましょう。メディアや社会からの反応を学ぶうちに、ニュース性の高いリリースが書けるようになっていくと思います。また、社会への価値を生み出すことの意味も考えられるようになっていくでしょう。